民族による色名の差異 〔民族・ファッション・衣装〕

可視光に対する人間の視覚能力に人種差はないとされているが、本来連続体である色をどの部分でいくつにくぎるか、つまり色彩語彙体系は文化によって異なる。

たとえば日本では虹は7色であるが、英語ではpurple、blue、green、yellow、orange、redの6色であり、メキシコのマヤ人では黒、白、赤、黄、アオ(青と緑)の5色、あるいは赤、黄、アオの3色である。

これは日本人とイギリス人とマヤ人に色の識別能力に差があるのではなく、虹をいくつの色彩語彙で表すかが言語によって異なるということであるにすぎない。

またマヤ語では日本語と同じように青と緑を一つの単語で表すが、マヤ人や日本人が青と緑を区別できないのではない。

さらに、同じ赤といっても、ある言語で「アカ」が表す範囲と他の言語の「アカ」の範囲が完全に一致するとは限らないのである。

色は色相(色あい)のほか純度、明度の3要素によって規定されるが、色相より純度と明度を重視する色彩体系もある。

たとえば日本の古語における色彩体系について佐竹昭広(あきひろ)は、アカ、アオ、シロ、クロの4語が基本であり、アカは明、クロは暗、シロは顕、アオは漠を表しているとしているという。

すなわち、アカ、クロ、シロ、アオは赤、黒、白、青という色相ではなく、明度(アカ=明、クロ=暗)、純度(シロ=顕、アオ=漠)を示している。

また、色相、明度、純度の3要素に基づくヨーロッパの色彩分類はかならずしも普遍的ではなく、たとえばフィリピンのハヌノー語では四つの主要色彩語彙は明、暗、湿、乾に関連している。文化、言語によっては物理的条件によらない色の概念の規定もあるのである。

しかし、色彩用語は各言語がまったく恣意的に定めるのだとする色彩体系相対論に対して、最近では、ある色と色の境界線はたとえ言語によって違っていても、各色の焦点はほぼ一致しているとする説や、さらには、あらゆる言語を通じて厳密に11の色彩カテゴリーからなるセットがあり、各言語はそのセットから適宜にいくつかを選ぶのだとする普遍論的な説もある。
update:2010年01月31日